第64章 中尾美希に裏切られてトラウマになった

中尾美希は中野蓮を抱いたまま、まるで勝者の階段を上るみたいに、周囲から向けられる視線へ得意げな眼差しを投げ返した。

エレベーターに乗り込んだ瞬間、ようやく胸の奥でそっと息を吐く。腕の中の蓮を、いっそう心地よい強さで抱きしめた。

「コンコン」

「入れ」

「中野社長、蓮がさっき栞さんとビデオ通話を……」

中尾美希は蓮を抱えて室内へ入ると、腕がきついのを隠すように、ぐっと持ち上げ直した。言いよどむ。ついでに長谷川栞の悪口を二つ三つ、さりげなく添えたい。

けれど、どこか危うい気配がして、飲み込んだ。

中野蓮は機嫌が最悪だった。中野航平の顔を見ても構う気になれず、しょんぼりと中尾美希の肩...

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